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私が目を開けると、翔太は私に
「なに願ったんだよ。」
と聞く。
『言ったら、叶わなくなるかもしれないでしょ。』
「なんだよそれ。」
『いや、願い事の濃度が薄まる的な?』
「濃度とかあんのかよ。」
少しの沈黙の後、
『翔太は?』
すると翔太は、ほんのり顔を赤らめる。
そんな顔しないでよ、私の前で。
『どうせ、鈴花(すずか)のことでしょ?』
私は、なるべくおどけた調子で翔太に問いかける。
「はぁ、なんでそうなんだよ。」
心がきゅうっと締め付けられる。
痛いくらいにわかってしまう。
どんだけ長く一緒にいると思ってるのよ。
授業中、ふと翔太を見る。
しかし、翔太の目線の先にいるのは、いつだって鈴花だ。
私ではないのだ。決して。
私のほうが翔太のこと、知ってるのに。
私のほうが先に好きになったのに。
鈴花と付き合いだした翔太は、私に惚気話をしてきたり、鈴花と喧嘩をしたら相談してきたりするようになった。
そんな話、私が1番聞きたくない話なのに。
でも、隣にいれるならと思ってしまう自分がいる。
いつまで願い続けるんだろう。
いつまで期待し続けるんだろう。
『鈴花ちゃんとずっと一緒にいられますように。とかお願いしたんでしょ。授業中だって、いつも鈴花のこと見てるもんねぇ〜いやらしい〜〜。』
「はぁ、見てねぇし。」
翔太が、耳を触る。
翔太が、嘘をついたときに出る癖だ。
そんなにわかりやすく、顔に出さないでよ。
翔太の仕草ひとつひとつが、私を苦しめる。
もう諦めたい。
いや、最初から好きじゃなければ良かった。
好きにならなければ良かった。
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