171人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺はそれを否定しない。妖の売買はほとんどが狩人と俺みたいな仲介人、それから金の有り余ってる好事家の間で行われる。捕らわれた上に金で買われた妖の末路は哀れだ。良くて繋がれたまま飼い殺し、実験台から見世物、慰み、なんでもアリだ。なぜかと言えば人権がないからだ。人間の社会ではいないことになっている連中を助ける機構はない」
雪夜の肩に、晴太と白兎が両側からしがみついてきて、ぷるぷる震えている。
「海棠、もう少し手加減してやってくれ」
いきなりこんな話を聞かせたら怯えてしまう。
「いいや、俺はおまえの友人のつもりなんだ。あとで後悔しなくていいように、捕まったら終わりってのがどういうことか、俺がきっちり教えておいてやるよ」
「……やり過ぎないでくれよ」
海棠が満面に悪い笑みを浮かべるのを見て、雪夜は嘆息した。とことん脅かして泣かす気満々だ。
「売買される奴らの中で、あのカッパの子どもは運がいい。売り手が雪夜で、買い手が俺だからだ。雪夜は言い値でいいと言った。だから俺も、婆さんが自分から差し出してくる金以上の欲は張らない。それと婆さんの家と畑がある土地のすぐ向こうは川だ。毎年、水が温んでくるとカッパが流れてくる。捕まえてもたいした金にならないカッパは狩られないから安全だ。そもそも俺のシマに流れの狩人なんかまず来ないしな」
最初のコメントを投稿しよう!