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「まったく。いいか、海棠。今度ウチの者に手を出したらカラカラに乾くまで天日干しにしてやるからな」
雪夜は久しぶりに会う友人、海棠の前に湯呑みをゴンッと乱暴に置いた。緑茶が波立つ。
「なんだ、怒るなよ。可愛い子とばったり出会ったら運命だと思ってナンパするしかないだろう」
ふざけたことを言って、長い脚を持て余し気味に組んだ海棠が、快活に笑う。
雪夜は向かいのソファに腰かけて、改めて友人の顔を眺めた。華やかな容貌の男で、いかにも悪そうな鋭い眼光も、くっきりと濃い眉や高い鼻梁も学生の頃から変わっていない。だが口元やちょっとした仕草に色気が増したようだ。といっても、今は左の頬についた赤い手形のせいで色々台無しだが。
「……見事に振られたな」
「照れ隠しの一発ぐらい受けてやるさ」
どこまでも冗談の好きな男である。
「それにしても可愛い顔立ちの子だったな。俺としては、つんつるてんのカッパちゃんより、さっきの白狐を売ってもらいたいんだが」
雪夜は笑みを張り付けたまま、こめかみに青筋をたてた。
「ハクは俺の身内のようなものだ。興味を持つな」
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