番外編 カッパと悪友

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ソファの肘掛けに頬杖をついた海棠が可笑しそうに笑う。 「いつの間に弟が増えたんだ? 俺もああいう可憐な風情の弟ならひとりくらい欲しいものだが、どこで拾ったのかも教えてくれないんだろうな?」 「教えるもなにも、拾ったんじゃない。向こうから転がり込んできたんだ。人徳の無さそうな海棠には一生望めないんじゃないか」 ずけっと言って、雪夜は席を立つ。顎でしゃくったら、海棠はおとなしくついてきた。 「頼みたいのは、この子だ」 雪夜は客間の奥の障子を開けて土間を渡り、長いこと使っていなかった浴室のドアを開けた。穴の開いていた浴槽を応急処置して、今は水を溜めてある。そこにゆらっゆらっとカッパの子どもが漂っていた。 海棠がふっと目を凝らす。左目だけが仄かに蒼白く発光する。 「ああ、思ったより小さいな。それにぼやけて、はっきりしない」 特殊な目を持つ海棠には、やはりカッパが見えるようだ。姿がぼやけているなら、このカッパの子は妖力がとても弱いのだろう。雪夜の目にもカッパの子どもは水に半ば透けて見える。
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