番外編 カッパと悪友

12/21
前へ
/477ページ
次へ
「つんつるてんで無反応で、しかも一般の人間には見えないような妖はオークションで値がつかないからな。このカッパちゃんの嫁ぎ先は、片田舎で旦那に先立たれたばっかりの婆さんだ」 「お婆さん? 妖が見える方なのか?」 「いや全然。そういう才は無い。だが棺桶にほとんど両足突っ込んでるからな。死期の近い人間には霊や妖が見えるって言うだろ」 浴室を出てすぐに、海棠は外で待たせている部下に連絡して、いくつか指示を飛ばした。カッパの子どもを連れて帰る準備をさせるようだ。 リビングに戻る途中で、晴太と白兎が客間の押し入れからこわごわと顔をのぞかせているのに気づいて、雪夜は苦笑した。花見の夜に拾ってきたカッパの子どもがどうなるのか心配で仕方ないらしい。 「海棠。旦那さんに先立たれて寂しいお婆さんのところへ連れて行くのは反対しないが、そのお婆さんがもう長くないなら、そのあとはどうなる。別の家へ移すのか?」 「いや、そのあたりも考えてある」 リビングのソファに再び座った海棠は、お茶をほとんど一息で飲み干すと、ちらっとドアの方に目を向けた。のぞいていた少年ふたりがピャッと首をすくめて隠れる。
/477ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加