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雪夜は苦笑いするしかない。
「落ち着け、ふたりとも」
「ユキ兄の鬼っ!」
「オニっ」
「オニっ」
海棠まで10代組の口真似をして、口元にごつい両手をあてている。全然似合わないし、可愛げもないが。
(…なんでいつも俺ばっかり悪者なんだ)
できる限りのことをしているのに鬼呼ばわりだ。はあ、と溜め息をついた雪夜は投げやりな気分でお茶をガブ飲みした。
「ははっ、おい少年たち。あんまり言うとナイーブな兄貴が泣いてしまうぞ。まあこっちに来て座れ」
ちょいちょいと海棠が晴太たちを手招く。晴太と白兎が顔を見合わせてから、思い切ったように駆け寄ってきた。海棠の横をするっと通り過ぎ、雪夜の背後に隠れてソファの背もたれから顔だけのぞかせる。
「俺の商売はお察しの通り、妖の売買を手がける仲介人、いわゆるブローカーだ」
海棠がふっと静かな面持ちになって話す。
「雪夜がなんでカッパの子どもを売るか分からないんだろう? 非道なことだと思ってる、そうだな?」
「…お、思ってる」
じっと黒い双眸に見つめられた晴太が生唾を飲む音が聞こえた。
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