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晴太と白兎がお互いを見つめ合う。
「そ、それならなにも売らなくたって…」
「お婆さんにカッパ育ててってお願いすればいい」
雪夜はつい、うんうんと頷いた。ウチの弟たちは真っ当に善良に育っている。海棠が肩をすくめた。
「それじゃあ俺は商売にならない。雪夜も金がもらえない。すると、どうなる? 俺はそこの可愛い白狐の男の子を捕まえて売り飛ばす。おまえ達が捕まった妖を助ける方法はひとつしかない。…金だ」
「そんなことない!」
晴太が勢いよく立ち上がった。
「ハクが悪いヤツに捕まったら俺が助けに行く」
「青いこと言うなよ」
海棠が低く凄んだ。怒鳴ったわけでもないのに威圧感が増して、部屋の空気が凍りつく。
「俺の部下は全員訓練された戦闘員みたいなものだぞ。妖だろうが人だろうが、うちの庭に侵入した時点で縊られて終わりだ」
ビクッと晴太が怯える。白兎がひしっと晴太に抱きついた。
「海棠、脅かしすぎだ」
「なぜだ? 俺は事実しか言ってない。ちなみに獣型の妖は生皮を剥がれて絨毯にされることも多いぞ」
「じゅっ、じゅっ、絨毯…っ」
口の中でもごもごした晴太がくたっと腰を抜かす。
「な? 怖いだろう。助けてほしいだろう。俺みたいなのと縁を繋いでおけば、融通が効くこともある。金で解決できることもある。だから雪夜は俺を使うし、いざというときのために俺に金を預けておく」
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