171人が本棚に入れています
本棚に追加
「目敏い連中だ。これだから、おまえのところには迂闊に遊びに来れないんだ。痛くもない腹を探られて面倒だからな」
「よく言うよ。君の腹はどこもかしこも真っ黒で痛むだろう」
苦笑した雪夜は、友人の背中を軽くたたいた。
「下の弟はあの通り気が小さいんだ。あんなに脅かしたら遊びに来たって懐かないぞ」
「それは残念だけどな。危機意識ってのは大事だぜ。あれはどう見ても甘やかしすぎだ、馬鹿野郎」
「うん、まあ仕方ない」
自覚はあるが、どうしようも無いというやつだ。
雪夜は「ところで」、 と海棠に笑みを向ける。言われっぱなしは癪だ。
「比嘉は元気か?」
「……まあな」
海棠が急に苦々しい顔になった。この男の弱点は学生の頃から変わっていないらしい。
「海棠の言う通り、俺は確かに弟達に甘いが、君だって寮生時代のルームメイトを今でも砂糖菓子みたいに甘やかしているんだろう?」
うっ、と今度は餅が喉に詰まったみたいに赤くなっている。いい反応だ。
「10年来の恋心は継続中のようでなによりだ」
「ほっとけ。あいつは妖じゃない」
「そうか? 職場にずっと住み込んだりしたら座敷童子にでもなりそうな気がするが。…海棠、君は比嘉に無理やり引越しさせたあと、自宅の場所を教えてやらずに送り迎えしてるんだって?」
海棠が目を剥いた。
最初のコメントを投稿しよう!