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1章
本日最後の授業が終わり、教室はざわつきだし放課後ムード真っ只中であった。
放課後の部活の事を話すものもいれば、帰り道どこで遊ぶかなど色んな話題が交錯する。いくつにも分かれたグループの中で自分は友人達と他の生徒のグループと変わり映えしない話をしていたんだと思う。だけど自分はその会話から意識が向いていなかったせいで内容が全く入ってこない。友人達の話よりも少し前の席で話している女子達の会話が気になり耳を傾けていた。
「愛瑠は記憶にない?私が持ち歩いてたポーチ」
「ポーチって乃亜が気に入って持ち歩いてたやつ?昼休みの時は持ち歩いてたよね」
「そう…昼休みまでは持ち歩いてたの記憶にあるんだけど、さっきから見当たらなくてさ・・・ねぇ探すの手伝ってくれない二人とも?」
高崎乃亜は懇願するように手を合わせ友人の紺野と戸塚に頼み込む。
「私、今日部活だからな~」と戸塚は困り顔で目を逸らす。
「私は放課後特に予定が無いから手伝うよ」
「うぅ~めぐる、助かる」
「良かったじゃん乃亜、愛瑠が手伝ってくれるなら瞬殺じゃん」
「彩夏の薄情者ぉ・・・」
少し頬を膨らませ不満げな表情の高崎に対して「まーまー」と紺野はあやすように場を和ませようとする。
「まあ次ポーチ無くした時には絶対優先して探してあげるから」
「また無くす前提かい!」
クラスの女子の会話を盗み聞きしているといえば聞こえは悪いが、自分が気にしているのはこのグループの会話の中身はそう重要な点ではなかった。この女子のグループの中にいる紺野愛瑠の動向であった。
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