1章

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そんな会話を少し前の席で繰り広げられているのを見ていると、今度は自分の横から突っ込みが入った。 「おい藍田、人の話聞いてんのかよ」 こちらにムスっとした声をかけてきたのは友人の野中純也であった。言われてみればこっちも話の途中だったと我に帰る。 体の向きだけは向かい合ってたものの机に肘をつけ気怠そうに腕で支えていた顔を上げて、話に身を乗り出す。 「何も聞いてんかったわ」自分は何も考えずに悪気も無く答える。 「聞いてなかった奴の態度と思えん表情だな、ある意味感心する」 純也の物言いに少し引っかかるが、怒るほどのことでもないと軽く聞き流して、どんな内容だったのかを尋ねる。 来週の月曜日に友人の萩野が野球部が休みということでどこで遊ぶ計画を立てていただけのことであった。 自分と純也は部活に無所属だが純也に関しては女子と遊びたいがためにアルバイトをしているためそこそこ暇ではない。それに対して部活もやっていなければアルバイトもしていない自分は暇な方ではあると思う。 「萩野は何かしたいことあんの?」 「カラオケとか?あといつものとこでラーメン食いたい」 「お前そればっかじゃん」と不満げな純也に対して萩野は「うるせぇ」と少し不貞腐れる。自分は特にこだわりもなかったので「いいんじゃない」と萩野の案に乗る。 「えぇ~っ」と言わんばかりの純也であったが多数決には敵わないと諦めカラオケの案に仕方なく受け入れる事となった。
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