1章

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そんな会話をしていると間もなくして担任の(いかり)が教室に入り、教室の前側を扉を閉め入って来た。あまり加減をしない扉の閉める音は教室に響き、その音と先生の姿が合図したかのように教室の喧騒はだんだんと小さくなり、生徒は各々の席に戻っていく。 「はーい、それじゃあ帰りのSHR(ショートホームルーム)始めるよー」 教卓にファイルを置いた碇はそのままスムーズに帰りのSHRが始める。先生は進路希望の提出期限が今週末ということだけを伝え、生徒からの連絡もないのですぐに終わりを迎えた。 SHRを終えると一瞬静かになった教室はすぐさま先ほどと同じように騒めきを取り戻す。萩野はすぐに部活に向かい、自分達に簡単に一言「じゃあな」と手を上げて去っていった。 教室を出ていく生徒も多かった為、先ほどよりは騒めきは小さく感じる。 特に予定の無い自分は課題のある教科の教科書とノートをバッグにしまい、ゆっくりと帰り支度をする。 「なあ、藍田?」 横から声をかけてきたのは純也であった。純也はかがんで自分の机に腕を置き距離を詰めてくるが声はやけに小さい。 「あんまり見過ぎてるとバレるぜ」 純也の顔は何か気付いたといわんばかりに口角が上を向きムカつくようなドヤ顔を見せてくる。 「バレるってなんだよ?」 本当に何のことか検討のつかなかった自分は少し苛立った口調で純也に問う。 「まあまあそんな怒るなって」 そういって純也は自分の視線を誘導するかのように、横目で顔をクイクイっと振る先には紺野の姿があった。なるほどなと、言っている意味をようやく理解した。純也はどうやら自分が紺野に対して好意を持っていると思っているのだろう。言われてみれば、勘違いされるような行動だったかもしれない。
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