14人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
「いや、まあ、負けるが勝ちってやつかな」
「誰が何に負けた、ですって?」
「大木君、まだわからないの?」
由目木はジョッキに残っていたビールを一気にあおった。
「まあ、こっちはお金を貰って終了だからいいんだけどね。うまく使われちゃったな。まあ、おそらく向こうの筋書き通りにしてあげたんだからいい働きをしたってことでオッケーなんだけど」
だん、と空になったジョッキをテーブルに置くと「麦茶をホットで」と叫んだ。
「すみません。麦茶のホットはちょっと……」
「すみません。番茶でもハト麦茶でも何でもいいんで暖かいお茶もらえます?」
大木は慌てて店員に頭を下げた。
「相変わらず大人げないですね。そこまでわかっているなら気持ちよく、その誰かさんの手のひらに転がされておきましょうよ」
最初のコメントを投稿しよう!