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3.家出か誘拐かそれが問題
濱田めぐみは鏡の前でため息をついた。
昨日から何度目のため息だろう。
子供がいなくなった、それは重大事件であり会社勤めをしていれば十分休む理由になるはずだ。
それなのに、休む理由にならないどころか隠さなければならないなんて、おかしな職業だ。
「どうかしました?」
濱田めぐみの前髪をコームで整えていたヘアメイク担当の女性が鏡越しに尋ねた。
「ちょっと、寝不足なの」
「悩み事ですか?」
「セリフがなかなか頭に入らなくて」
濱田めぐみは笑ってみせた。
セリフなんて入るわけがない。
「こんなことをしている場合じゃないのよ!子供がいなくなったんだから!」
そう叫んでわあわあ泣けたら、どんなにいいだろう。
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