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プラスチックのカップを左右に一つずつ持って、緊張した顔でセルフサービスの水を汲むとほんの少し得意そうな顔をして、こぼさないようにそうっと運んでくる姿を大木はじっと見ていた。
「何?うれしそうな顔をして」
「いや、ありがとう。いつもは、運んでくる側だからさ」
「さくらさんに、こきつかわれてるんだ」
「まあね」
望は不安そうにあたりを見回した。
「うまく撒けたのかな」
「すぐにわき道にそれたから大丈夫だと思うよ」
「そっか。プロが言うんだから大丈夫だよね」
「ああ。心配せずに飯を食え」
確信はなかったが、平然と答えた。
大人には子供を安心させる義務がある。
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