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「もっかい、言いますよ」
わざとらしく大木は繰り返した。
「波多野翼と中村望は入れ代わって家出したんです。つまり、波多野翼は劇団の合宿に行っていて、中村望は家出をしている。だが、実際に家出をしているのは翼で、合宿に行っているのは望。そういうことだよね?」
大木に同意を求められた翼は頷いて小さな尻尾をパタパタ振って近寄ってきたシェリーを、抱きあげた。
「その犬も、キミの犬じゃないのね」
「なんでこんな面倒臭いことを考えたんだ?」
かつん、ヒールの音を響かせて由目木は翼の正面に回りこむ。
「まず、あたしが言いたいのはね」
ほぼ同時に、大木が言う。
「どうして僕たちを騙したんだ?」
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