6.お役に立てれば光栄です

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 でも今はそんなことより、と黒いスカートの(すそ)を広げて座り直す。 「翼の話を聞きましょう」 「どうしても全部話さなきゃダメ? 個人情報を含むんだけど」 「個人情報だと? ろくでもない単語ばかり知っているな」  大木は呆れた。 「じゃあ、さっき話したことで全部ってわけじゃないのか」 「なにをどこまで話したの?」 「だから、入れ代わって家出をした、ってところまでだよ」 「その話で全部済んだと思う方がどうかしてるわよ、大木君」 「要約すると、そういうことになるよ」  翼が反論すると、由目木はふっくら大きな唇をきゅっと結んで、きっぱりと言った。 「要約しないで、全部話しなさい。ことこまかく、全部、何もかも」  息を吸い込んでトドメの言葉を吐いた。 「でないと協力できない」  
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