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でも今はそんなことより、と黒いスカートの裾を広げて座り直す。
「翼の話を聞きましょう」
「どうしても全部話さなきゃダメ? 個人情報を含むんだけど」
「個人情報だと? ろくでもない単語ばかり知っているな」
大木は呆れた。
「じゃあ、さっき話したことで全部ってわけじゃないのか」
「なにをどこまで話したの?」
「だから、入れ代わって家出をした、ってところまでだよ」
「その話で全部済んだと思う方がどうかしてるわよ、大木君」
「要約すると、そういうことになるよ」
翼が反論すると、由目木はふっくら大きな唇をきゅっと結んで、きっぱりと言った。
「要約しないで、全部話しなさい。ことこまかく、全部、何もかも」
息を吸い込んでトドメの言葉を吐いた。
「でないと協力できない」
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