6.お役に立てれば光栄です

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「それに、言われなくてもそんなことはわかっているよ。リコンはもう仕方がない。だけどそのことはお父さんとお母さんだけの問題じゃないんだ。どうしてわからないの?大人って、何か大きなことでも起こらない限り気付かないんだ。こういうことでもしないとわかってもらえない。ぼくらがどうしたいか、何を考えているのかなんて聞いてくれやしない。ごめんね、その一言で全部許されると思っているんだ。そりゃ、こっちは決められたことに従うしかないんだけどさ。でも一方的に決められて従うだけなんてひどすぎると思わない?ちょっとくらい子供の意見を聞いてくれてもいいじゃないか」 「……家出なんて面倒なことをしなくても、ちゃんと親にそういえば良いのに」  一気にまくしたてると、翼は興奮のあまりほっぺたを赤くしてソファに膝を立てた。  ひざこぞうのあいだにあごを挟んでぎゅっと体を縮こめた姿は、これ以上何か言われることを拒んでいるように見えた。
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