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「……初めまして」
仕立てのいいスーツにぴかぴかに磨かれた靴、自分に自信のあるものだけが持てる顔つきで現れた中村修一の隣には紺色のふわりとした素材のワンピースにカーディガンを羽織った濱田めぐみの姿があった。
「……本物だ」
ぼんやり見とれている大木の口から声が漏れた。
由目木の肘がさりげなく大木の腹部に命中する。
「う」
思わず腹を押さえ、黙る大木に一瞥をくれると、由目木はあでやかな笑みを浮かべた。
「どうぞ、そちらにお掛け下さい」
「このたびは娘がご迷惑をおかけいたしました」
深々と頭を下げただけなのに、見とれてしまうのはやはり女優だからだろうか。お腹に手を当てたまま、大木はまだうっとりしている。
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