14人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
「翼。お母さんと暮らすより、お父さんと暮らす方がいいならそう言ってくれればよかったのに」
「お父さんと暮らしたいとかそういうんじゃなくて、ただ勝手に決められたことが嫌だったんだよ。さっきもそう言ったでしょ」
「まだ続きがあるならちゃんと聞くから」
三人の声が遠ざかり、ドアの向こうに消えた。
バタン、ドアが閉まり事務所はしんと静まり返った。
「今までで一番、人口密度が高かったですね」
「そうね、八人と一匹だもの」
「心なしかまだその余韻が残っているような気がします」
「残っているね。ティーカップとか出しっぱなしの椅子とか」
「……そういう意味じゃないですけど、片づけましょうか」
「片づけましょう」
大木は椅子を片付け、若干歪んだソファーの位置を戻す。
最初のコメントを投稿しよう!