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プロローグ(2)
気づくと部屋の中が暗闇に沈んでいた。
確かにさっきまで、太陽の光が縁側を超えて居間全体を明るく照らしていたはずなのに。
重たい頭をどうにか動かして柱にかかった時計を見ると、針は十九時を過ぎたあたりを指している。
コチコチ、と秒針の音が大きく聞こえてくる。
数日前、先生からやえおばあちゃんが倒れたという知らせを受けて病院へ駆けつけたけれど、やえおばあちゃんの意識は回復することなく、そのまま両親と同じ場所へ逝ってしまった。
あまりにも突然で、これが現実なのかどうなのわからないまま、葬儀や役所の手続きなど悲しむ暇を許さないとばかりのやるべきことに追われていたら、あっという間に時間が過ぎていた。
今日も学校を休んで家の片づけをしなければと思っていたのに、私はやえおばあちゃんの遺影の前からほとんど動けずにいた。
すぐ目の前でやえおばあちゃんが微笑んでいるのに、家の中に人の気配は一人分しかない。
「おばあちゃん……」
まさか、こんなに急にあっけなく会えなくなってしまうなんて。信じられない。だって目を閉じれば、やえおばあちゃんの声が聞こえてくる。
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