プロローグ(6)

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プロローグ(6)

「お店を赤字にしないこと。毎月ね。花帆ちゃんが真剣にお団子屋をやるというのなら、ただやるだけではなくてしっかり経営していかないといけないでしょう。もしひと月でも赤字を出したら、お店を閉めて叔母さんの家に来ること。それが条件です。……それでもやれる?」 お店を赤字にしないことがどれだけ大変なことなのか、今はちゃんとわからない。でも、想像以上に大変なことがあるとしても気持ちは変わらない。私にとって一番辛いのはここを失ってしまうこと。 「やります。ここを残せるなら、大変でも頑張ります!」 「……そう。なら精一杯やるのよ。……でも、叔母さんがあなたのことを心配していることは忘れないでね。たまには様子見に行くからね」  ひとつ困ったようにため息をついた叔母さんが、最後は優しい声で言った。 「ありがとうございます」と電話を切る。 「おばあちゃん……私、お店やれるよ。頑張るから、見守っててね」 呟くと、不意に『しょうがないわね、花帆は』と微笑むやえおばあちゃんを思い出した。  その週末。 「うん、こんなもんかな。……お団子よし、お店よし」  団子屋『さかえだ』は店頭でお団子を売るだけでなく、店内には座ってお団子を食べられるスペースがある。お団子と店内の準備を終え、あとは開店の時間を待つだけだ。 私は期待と不安で入口の引き戸を見つめた。 「はあ、ドキドキするな……」 お団子の材料を仕入れている商店のおじさんに、『さかえだ』を再開することを伝え、連絡先のわからない常連さんにも伝えてもらえるようお願いした。商店のおじさんなら顔が広いからきっと誰かには伝わるはず。それ以外にも、お店によく来てくれる近所の人には自分でもお店のことを知らせに行った。 今私ができることはやったと……思う。 これでお客さんが来てくれるのかどうかはわからない。一人も来てくれなかったらどうしようという不安 が、一秒ごとに増えていく。 いやいや、と頭を振る。 弱気になっていてはダメだ。もし今日誰も来てくれなくても、明日は来てもらえるように頑張るしかない。 誰も見ていないことに、一人でうんうんと拳を握っていると突然お店の引き戸が開いて、外の空気が流れ込んでくる。  もしかしてお客さん……!? 「――って、葵」
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