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4.最高の喜び【豪】
俺が誰かにふられて彼の元に戻ると、冬樹は最初怒った様子を見せる。俺はその時ばかりは情けなく甘える。そうするとすぐに抱きしめて慰めてもらえる。
傷ついたふりをして、その時だけ俺が正気じゃないと思わせる。そうやって初めて俺は冬樹に「好き」「愛してる」「冬樹しかいない」と本音を吐きだせる。
いつもはつれない冬樹も、俺のせいで不安になった後でそう言われてまんざらでもない様子を見せる。
そのタイミングを見計らって俺が体に触ると「やめろ」と言われる。だけどすぐに中は柔らかく濡れ、その中に入ると彼が俺を受け入れていることを感じられる。俺はその瞬間が一番興奮する。
冬樹とのセックスは麻薬のようだ。何度しても飽きることがない。毎日したいと思うのに、それは出来ないからこういう時だけ思い切り体を合わせる。
不安だったのに、何でもないふりをして――俺を見て眉を下げる冬樹。悪いことをした俺を優しく包み込む冬樹。感じていることを隠そうとして隠せない冬樹。全部可愛くて仕方がない。
俺のために見せる表情、俺だけが見ていい冬樹の顔。
俺の下で喘ぎ、艶めかしく体をくねらせる冬樹に汗だくで奉仕する。固い蕾のような彼が少しずつ開いていくのを見るのはたまらない。
下腹部の快感が脳天にまで突き抜け、俺は彼の中で果てる。アルファの体液を受け、冬樹の内壁が収縮してぎゅうぎゅう搾り取ろうとする。
口で嫌だと言いながら、最後は雄の精子を一滴残らず飲み込もうとする彼が愛しい。
しばらくの間、この俺の匂いをまとって誰も近づけないでくれ――。
そう思いながらゆっくりと腰を押し付けるようにして内部の余韻を楽しむ。
冬樹のそれは何度も頂点に達していて、俺の腹も彼の腹も白いもので汚れていた。
オメガとアルファの匂いに包まれて俺は最愛の恋人に口付けする。
「好きだ、冬樹……。俺のこと愛してる?」
「ん……してる……」
情事の後だけは、冬樹もぼんやりしているのか無防備に甘い言葉を口にしてくれる。
「俺が好き?」
「……すき……」
「俺も、冬樹だけだよ」
「ん……」
普段なら絶対してくれないが、セックスの後だけ彼の方から擦り寄ってくる。ふわふわと柔らかい猫っ毛が顎にあたる。
これが幸せ以外のなんだというのだろう。
この瞬間のために生きている。
しかしそんな時間は長くは続かない。
ひと心地ついた冬樹は一人で起き上がり、無言でシャワーを浴びに行く。バスルームから出てきた時にはもう、元の冷静な彼に戻っている。
俺はそんな彼を見て気分が急降下するのが嫌だった。だから大抵彼がシャワーを浴びている隙に服を着て自宅へ帰ることにしている。
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