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家に帰ったら、見知らぬとんでもない美形が、堂々と粗末な椅子に鎮座していた。
「アーシャ、やっと会えた。あの日の約束を果たそう」
そのものが光り輝いているんじゃないかと思うようなご尊顔。座っていてもわかる均整のとれた体つき。足が長すぎて、我が家の年期の入った椅子だと完全に持て余している。
しかし先の通り、その人物はまったく見覚えのない顔をしていたので、私は即座に踵を返して警邏を呼びに行こうとした――のだけど。
(あ、開かない……!)
なぜかついさっき開閉したばかりの、外へと続く扉が開かない。取っ手を回してもガチャガチャと鳴るばかりで、押してもピクリとも動かないのだ。まるで塗り込められたかのように。
正体不明の不法侵入者(仮)と閉じ込められてしまった状況に焦る私の背後から、悠々と近づいてくる足音がした。
「何をしている、アーシャ。俺と同じ空間にいながら、俺に背を向けるなんて」
「人違いですので今すぐ出て行ってくれませんかね!?」
私の名前はセーラであり、アーシャではない。なぜ私の顔を見た時点で気付かなかったのかは謎だが、完全なる人違いだろう。
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