ボールに乗せて

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 灯りはついているのに、どこかほの暗い廊下口を渡りながら、私はひとり後悔を二重三重に塗り重ねる。  「入れ」なんて願いをかけるんじゃなかった。いいや、なんてことを思うのだろう。ずっと今までこの勝利を二人で願ってきたはずなのに。それでも、本当は入ってほしくなかったのだ。  勝ち点がライバル黒糖しまんちゅより一点を上回った。黒糖しまんちゅはすでに試合行程を終えていて、勝ち点を増やすことはない。君が所属しているアクアスターズの昇格は決定的なものになった。    今まで以上に遠征の回数が増え、練習も厳しいものになるだろう。君がチームに貢献した活躍を鑑みると、別チームへの移籍だって夢ではなくなった。地元開催の試合にしかサポーターとして参加できない私にとって、今日の勝利は彼との物理的距離が広がることを意味していた。
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