2人が本棚に入れています
本棚に追加
そのとき始めに攻められるのは、玉城関を中心とする城砦のすぐ南に位置する、関南の街だ。ハクヤの脳裏に、無惨に血を流して倒れている両親、そして関南の街を覆う炎の中に消えゆく、兄の姿が蘇る。その光景を振り払う一心で、ハクヤは剣の柄を力強く握りしめた。
「行くぞ!」
「うおおおっ」
ティロクのかけ声に、周囲に集まった兵士たちが鬨の声を上げながら敵の小隊に突っ込む。
ハクヤも必死で剣をふるい、シャクバンの剣が鉄の鎧を掠るのも構わず敵兵を斬り倒していく。
「ここは……もう二度と通さない」
ぶつかった敵部隊の最後の一兵の腹を、ハクヤは渾身の力で横一閃に薙いだ。その瞬間、離れたところに現れた敵兵の投げた石が、ハクヤの頭を直撃した。
「大丈夫か、ハクヤ!」
ティロクが慌てて駆け寄ってくる。その姿が薄れゆく視界の彼方に飲み込まれていくが早いか、ハクヤの意識は暗闇の中に落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!