偉大なる小説家の遺言

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「――本日、今年度の年間賞金獲得額の上位者を発表する、地祇(ちぎ)賞授賞式が行われました。上位三名には、九十七万二千円を獲得した『中禅寺(ちゅうぜんじ)湖水(こすい)』氏、百五万六千円を獲得した『宇治家(うじいえ)櫻子(さくらこ)』氏が選出。そして栄えある大賞には、五百十一万千円と圧倒的差をつけた、『宇都宮(うつみや)暁介(ぎょうすけ)』氏が選ばれました。宇都宮氏の大賞受賞はこれで七年連続となり、地祇賞設立以来、三年以上の連続受賞がなかったにも拘わらず、宇都宮氏は今年も記録更新を――」  朝のニュースは、どの番組もそのことで持ちきりだった。アナウンサーやゲストたちは、宇都宮暁介の本を手に、実に楽しそうに話している。 「本日発売の『偉大なる小説家の遺言』には、これまでの宇都宮氏が手掛けた受賞作が全て掲載されているとのことで……その数なんと千二百五作!」  今日の書店は何処も行列、暁介氏の書籍は忽ち完売となるだろう。僕も、ニュースが終わると同時に受付を開始したその本を注文したが、接続にえらく時間がかかったので、きちんと注文できたか心配だ。
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