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それから私は隣のベッドで入院してる男性と話をするようになった。
私の検査の結果はおもわしくなく、担当医は渋い顔を浮かべるばかりだった。
だが私はそのことをあまり気にすることなく、隣の男性と話をする事に気持ちが傾いていた。
その人は自分の名前もよく覚えていなかった。
どうやら記憶喪失らしい。
それも長いことそういう状態にあるとのこと。
少し前に入院して癌が発覚し、そのままここにいるようだが、その前の事をあまり覚えていないらしい。
ただ最近になって若い頃のことを少し思い出すようになったと言う。
昔、若い頃、ある約束をしたのに、それを果たせないまま、今日まで生きてきてしまった…と彼は言った。
どうにもそのことが心残りで仕方がないと…。
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