縁と月日

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圭くんがお店に向かうと、「あ。陽ちゃん、ちょっといい?」とおばさんに小声で話しかけられて、私も玄関に出た。 同じエプロンでサンダル履きのおばさんが、戸口で微笑んでいる。 「陽ちゃん、こないだは私、高城さんのこと勘違いしてたみたいで、ごめんね。圭と陽ちゃんがそういう仲っていうの、知らなくて。デタラメなこと言っちゃって、圭に怒られちゃった」 おばさんは、怒られたと言いつつも、口元を押さえてふふふっと楽しそうに笑う。 「あ、いえ全然、大丈夫です。誤解は解けたので。……宜しくお願いします」 「うん。本当、あの子、真面目なのはいいけど、三十一にもなってどうなのって思ってたのよ。陽ちゃんなら、気心知れてるし、有り難いわぁ。今日も、ありがとね。じゃあ、後でね」 バタバタと言うだけいうと、ササッと手を振って、お店に戻っていってしまった。 おばさんは、もう私達が付き合い始めた事をちゃんと知っているらしい。 こないだ、色々宜しくって言われて、どういう意味だろうと思ったけども、これは確実に知っている。 なんか、それって、照れる。 恥ずかしい。 まぁ、誤解されて、ずっと近所の子でいるよりはマシだけど。 あはは。 私が圭くんの彼女ですよ。 綺麗な高城さんじゃなくて私だってのに、びっくりしたかな、おばさん。 こないだまで、おばさんは、姉がどう、高城さんがどうって言っていたんだから、多分、びっくりしたと思う。 でも、いい。 ふふっ。 もうずっと伝わらないと思っていた想いが、通じた。 世の中、わからないものですよ。
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