縁と月日

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一回目のグループの途中、外に出ると置いた椅子に20代前半の女性三人組が座っておしゃべりしていた。 「いらっしゃいませ。すみませんが、お酒の試飲なので、年齢確認だけ良いですか?」 「あ。もう20歳超えてます。ええっと免許証」 「はい。失礼します」と3人分確認していく。 そこで入って来た家族連れにも椅子に座ってもらって、次のグループにした。 家族連れに、ちょっと待ってもらうと説明している途中、隣の女子グループの一人が「ここの店員さんのお兄さん、イケメンなんだよなぁ」と言ったのが聞こえて、ドキッとする。 「ほんと? いいじゃん」 「でも、先生はおじさんの方かもね。お店の方にいるかも」 うーん。 やっぱり圭君は人気か。 聞かないふりで、蔵に戻って終わった一組目をお店の方に誘導し、テーブルを圭くんと片付ける。 「陽ちゃん、大丈夫?」 「うん。大丈夫。二組め、呼んでくるね」 二組めは、子供がいて、うろうろする子供がストーブに近づかないように見張っているのが私の役目になり、圭くんを惚けぇっと見ているわけにいかなくなった。 その代わり、女子のグループは、「わあ、そうなんだ。よく知ってますね」と黄色い声で盛り上がっている。 ううう。 私はミライちゃんという会場に飽きてしまったその3歳児の手を握って、中庭を彷徨く。 「ママ達、すぐ終わるからね。」 「んー」 ふらふら店の方に行こうとするミライちゃんの相手をしていたら、おじさんが休憩中だったらしく、家から出てきて笑われた。 「おお、陽ちゃん、子守りまでやってるの?悪いねぇ」 「いえいえ、大丈夫です」 「ありがと!」 ミライちゃんの手を引いて、ちょうど入ってきた3組目になるお客さん達に説明して椅子に座ってもらったりする。 それからも家族連れ、カップル、女子グループ。色んな人がきて、時々、近所の顔見知りの人もやってきた。
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