縁と月日

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 午後もゆっくりではあるものの途切れず人が来て、結局、昼休み以外あまりちゃんとした休憩もないまま、夕方までワークショップは続いた。 5時頃、玄関の看板を下げて、最後のグループのセッションを行った。 歳の差カップルと、四十代の女性三人組。 女性グループの人が結構おしゃべりで、はじめからわいわいと話すので、賑やかなグループになった。 「さっき、お惣菜屋の料理デモも見たんですよ。今日、これからホテルなのにお弁当食べたくなっちゃいましたぁ」 「あそこのお弁当、美味しいですよ。僕たちも昼に頂きました。ずっと昔からやってるとこで」 「へえー、良いですよね。ここも長いんですか?」 「そうですね。昔は造り酒屋だったんですけど、おじいさんの頃にはもう普通の酒屋で」 お客さんが試飲しながら、圭くんとおしゃべりしているところにグラスを出したり、残ったリーフレットの片付けをしていたら、カップルの女性の方と目があった。 少し頬の赤い、そのお客様が突然、私に「も、この辺の出身なんですか?」と聞いてきた。 わっ。 「え?あ。いえ、……あ。はい。えっと、私は奥さんじゃなくて、……でも、この商店街の出身です」 何気なく聞かれただけだけど、焦ってしまった。 「あっ。そうですか。さっき、お店の方が、家族でやってるっていうから、勝手に。すみませんっ」 「いえいえ! 大丈夫ですっ、全然」 ブンブン手を振っていると、圭君が「ははは。両親と俺でやってるんです。陽ちゃんは、今日だけ特別にお手伝いしてもらってて」と説明してくれた。
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