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いつもおばさんとかに優しくしているのに、ちょっと嫌そうに言うから、笑えた。
「ふふふ。いいじゃん。おじさんのおごりで、お寿司だよ?」
圭くんの腕に囚われたまま、そう言うと
「ははは。寿司ね?俺は寿司よりこっちが食べたい」
と言って、耳たぶを指先で摘まれた。
「はぇ?」
食べたいって、私?
びっくりして、変な返事をしてしまった。
始めっから誂うつもりだったのか、私の反応を見ている。
とろけるように甘めの視線で、困る。
あー、もう。
「ははは。可愛いな」
そう言って、ぎゅっと私を抱いている腕に一瞬力を入れてから、腕を解いた。
「しょうがないから、あっち、行きますか? あ。姉ちゃんの子供も来てるから、うるさいよ」
「ふふっ。大丈夫」
「余った酒、持ってこ」
ドキドキの余韻で熱い頬をパタパタしながら、圭くんの後に続いてお家へ上がった。
昔、子供のころに何回か来たことのあるのだけど、正直、あまり覚えていない。
「古い家だけど、どうぞ」と、スリッパを進めて、居間に案内されると、お姉さんの理沙さんが奥から顔を出した。
「あ。来た?」
「ん。もう頼んだ?」
「うん。お母さんがさっき電話注文してたよ。あ、ヒロ、もうすぐ御飯だからもうダメ!」とリビングのテーブルの上に置かれたお茶菓子を取ろうとしていた男の子を注意している。
「こんばんは」と挨拶すると、お姉さんも「お久しぶり、陽ちゃん。今日は一日ありがとうございました」とお礼を言ってくれた。
「いえ、楽しかったです」
運んできた残りのお酒をテーブルに出して、圭くんがグラスやお箸をセッティングしている間に理沙さんに今日の様子を話していたら、おばさんが大きな寿司桶を持って帰って来た。
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