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「店の方に持って来てくれたわ。鮨屋の若い子、こっちの玄関、分かんなかったみたい」
どんっと、寿司桶をテーブルの上に置くと「陽ちゃん、一日、お疲れ様でした。ありがとね、食べてってね?」とお寿司を勧めてくれる。
「いただきます。おじさんは?まだお店ですか?」
「うん。さっき会長が顔だして、まだ店の方で喋ってるのよ。良いから、先、始めて。あ、ヒロちゃんのお寿司は、こっちね」
そう言って、サビ抜きのセットを理沙さんに渡して、圭くんをちらっと見ると、おばさんは「ちゃんと陽ちゃんに食べてもらってよ?お酒、好きなの出してあげて。お父さん、もうすぐ来るから」と申し付けて、「お醤油、付いてた? 持ってくるね?」とキッチンに向かう。
圭くんのお家、賑やかだな。
理沙さんとヒロ君が来ているし、私もお招き頂いているからだけど、私の家よりも圭くんちは、お商売しているから忙しくって、わいわいして、温かい。
ちゃきちゃき動くおばさんの見ていたら、圭くんは「陽ちゃん来て、張り切ってる」と私に小声で言って笑った。
「え?」
「そりゃ、30すぎの息子が珍しく彼女連れて来たら、張り切るでしょ?」と理沙さんがヒロ君用のお寿司のラップを取りながら笑った。
「あ。はい」
近所の子っていうんじゃなくて、息子の彼女だから?
ふふふ。
くすぐったい。
彼女だし。
キスしちゃったし?
なんて、さっきのキスを思い出して、急に焦った。
「はい、陽ちゃん、箸、どうぞ」
「あ。あ、ありがと」
「食べて」
「う、うん。いただきます」
変な事を思い出してる場合じゃなかった。
あはは。
恥ず。
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