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「本当に紋ちゃん、こないだちょっと見たけど、また垢抜けて、どこかの女優さんみたいよね?」
おばさんがそう言って褒めてくれたけども、身内で、そうですね、とも、そうですか?とも言い難く、「はぁ。聞いたら喜びます」と頷いた。
圭くんはもうしれっと、お酒のグラスをくいっと傾けて、日本酒を味わっている。
それでおじさんが「お前は、本当に……。近所のヤツらに僻まれるぞ」と笑った。
「何が?」
「陽ちゃんと付き合うとか、本当に」
「ああ。まあ、しょうがない、それは」
私と付き合うから僻まれるといったけれど、多分、言いたいのは姉の次に妹と付き合うなんてって言われるという事だろう。
圭くんは分かっているようだったけど、さらっと流した。
すると、おばさんが「栄錦商店街の美人姉妹だからね?言っとくけど。あんた、良かったねぇ、おじいさんに似て」と言うから、箸が止まる。
「な?なんですか、それ?」
「えー、陽ちゃん達、ここの名物美人姉妹じゃない」
美人姉妹……。
聞いた事もない。
「え?お姉ちゃんは、まぁ。私は、美人姉妹では……」
「いやいやいや、タイプは全然違うけど、陽ちゃんもなかなかだよ?ね?」と、お世辞のような事を理沙さんが笑いながら言う。
ねえ、と言われた圭くんを見ると、一言、「だね。」と照れたように笑いながら言った。
ひょ。
ひょえ~。
ど、ど、どういうつもり??
そんな顔したら、私、私が照れる!
「ははは。惚気けてやがる」
おじさんが笑って、お寿司を摘んでいる。
「あ、あの。それに、圭くんが、お爺さんに似て良かったって、何ですか?」
「ああ。爺さん、覚えて無いだろうけど、若い頃はかなりいい男でね。シュッと、ね? 若い時は、ちょっと役者なんかしてたよ。顔は良くても大根ですぐに止めたらしいけど。ハハ」
「お爺さん、モテたらしいよ」
「お父さんより、圭のほうがおじいちゃん似よね? 若い頃なんて、写真しか知らないけど」
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