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せっかくだし、小さな家でも、泊まってもらったら良い。私は別に座布団に寝袋でも、一晩位、全然オッケーだ。
「そう!? 良かった。じゃ、後で」
随分興奮気味の母の電話を切って、部屋に戻ると、お泊りのお客様が一人増える事情を説明した。
「……何処でも良いんだけど、お母さん、張り切ってるみたいで……」
圭くん一家は姉の婚約者が子持ちだと言うことに、一瞬、戸惑っているようだったけれど、理沙さんが知り合いの誰々も再婚したとか話をし始め、おばさん達はその話題で盛り上がりだした。
圭くんは、姉の婚約者に娘がいることはすでに知っているようで、私に「陽ちゃん、寝袋って、キャンプするんだ?」と言った。
「ずっと前ね。大学生の頃、付き合いで。押入れの何処か、探せばあるはず」
おばさん達の会話を邪魔しないように、小声で返事すると、圭くんは少し考えるように、「そっか」と小声で返事した。
「……それなら、寝袋探すより、俺のとこ、泊まれば?」
「っえ?」
思わず、大きめの声が出て「なに?」とおばさん達に注目されてしまった。
「な、なんでも無いです……ははは」
びっくりした。
ははは、と笑って誤魔化す。
圭くんも笑って、「なんでも」と、グラスを空けている。
「何よ?可笑しいわね。」
「ナイショ話か?」
と、おばさん達に文句を言われたけど、優しく流して、話に戻っていく。
「夜、迎えに行く」
「わ、分かった」
低い小声で、笑って言うから、思わず頷いた。
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