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お寿司とお酒をどんどん勧められ、たくさん頂いた。帰り際、圭くんは当たり前のように送ってくれた。
賑やかなお家を出て、商店街へ戻る脇道にたつと「うるさいのに、付き合わせて、ごめんね」と圭くんが言う。
「全然。ご馳走になりました。楽しかった」
「良かった。……俺達の事、さっさと話しちゃった方が良いかなと思った」
横に並んで歩き出しながら、そう言うと、すっと私の手をとって、商店街を歩く。
大きな手に包まれるように手を握られて、横の圭くんを見上げた。
「うん。ありがと」
私と付き合うことにしたと、おばさん達に早めに言った事で、この間のような誤解を避けることにしたらしい。
圭くんの手に包まれた手を動かして、私からも握り直すと、ふっと圭くんが隣で微笑んだ。
商店街はもう、飲み屋さん以外は閉まっていて、人通りもまばらだ。その中を、手を繋いで、ゆっくり歩く。
今まで、何度も送ってもらって、いつか手を繋いで歩けたらと夢に見た。
そう思っていた事を思い出すとニヤけて来た。
「なに?」
私のにやにやがバレて、圭くんが横からこっちを覗き見る。
「なんか、嬉しい」
「あっそう。俺も」
あはは。
さらににやにやしちゃう。
「ふふっ」
ニヤけていたら、惣菜店のおじさんが、閉まった店先から出てきたのに遭遇した。
「こんばんは」
ペコッと会釈すると、私達に気がついたおじさんは、あらっという顔を一瞬だけした。
「あー、圭ちゃん、お疲れさん。どうだった? 盛況だったって聞いたけど?」
直ぐに自然に今日の様子を聞かれて、手を離して立ち止まった。
「どうも。お蔭様で、結構一日、賑やかでした。おじさんのとこは?」
「うちは、ちょっとやっただけだけど、感じは良かったよ。喜んでもらえたかなーとは思うなぁ。まぁ、それでこっちが儲かったかっていうと、まぁ別の話だけどな。はっはっは」
ポケットに手を突っ込んで、豪華に笑う。
「そうですね。でも商店街が賑やかなのは、良いですよね」
「そうそう。人がね、来てくれたら、ね?良かったよ。でもまぁ、俺は疲れたんで、ちょっとあっちで一杯、な?」と飲み屋さんの方を指指す。
「ああ、そうっすね。お疲れ様です」
「うん。お疲れ。じゃあな」
じゃ、と、軽く頭を下げて挨拶を済ますか済まさないかで、圭くんが私の手を握り直した。
すれ違いざまに、「じゃあな」と手をあげていたおじさんが、脚をとめた。
「あっ。おいっ。二人、そういう事か?」
「あ。はい」
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