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「何よぉ? そうか? へぇー。圭ちゃんは、はぁー、……色男だなぁ」
わぁーとか、へぇーとか、感心だか感嘆のため息をついてるけれど、「色男だな」に「だって、昔、お姉ちゃんの方とも付き合っていただろ?」が見え隠れする。
「ははは。どうも。じゃ、失礼します」
圭くんは、余裕で笑って、頭を下げると私の手を取って、歩き出した。
「色男だってさ」
私が誂うように言うと、困ったというように微笑んでいた。
「しょうがないかな」
「うん。さすがに、近所の姉妹に両方、手出したら、それは色男だよ」
「陽ちゃんっ!?」
私があんまりな言い方をしたから、圭くんがこっちを見た。
「ははは。圭くん、焦ってる!」
「その言い方……。人聞き、悪い」
「ふふふ。そうだね~」
もう、圭くんが私と手をつないでいてくれるというだけで、姉の事も冗談にできる。
あまりに私は単純で、自分でもそれに笑えた。
玄関の前まで来ると、圭くんは手をそっと離した。
「明日、夜、いい頃、連絡して。迎えに来る」
「うん。迷惑じゃない?」
「じゃないよ」
そう言って笑った圭くんの瞳に、夕方の熱を思い出して、ドキッとした。
「じゃ、じゃあ、明日ね?」
「うん。明日」
余裕の返事に、一人焦って、ぶんぶん手を振って、家に入った。
泊まる約束をしてしまった。
蔵の二階には行ったことがないけど、半2階みたいな感じに見えるし、ゲストルームがあるとかではないと思う。
圭くんの寝室だけ?
あ、リビングがあるのか?
でも、まぁ、誘われた。
さ、誘われたよぅ~。
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