縁と月日

25/51
1704人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
「何よぉ? そうか? へぇー。圭ちゃんは、はぁー、……色男だなぁ」 わぁーとか、へぇーとか、感心だか感嘆のため息をついてるけれど、「色男だな」に「だって、昔、お姉ちゃんの方とも付き合っていただろ?」が見え隠れする。 「ははは。どうも。じゃ、失礼します」 圭くんは、余裕で笑って、頭を下げると私の手を取って、歩き出した。 「色男だってさ」 私が誂うように言うと、困ったというように微笑んでいた。 「しょうがないかな」 「うん。さすがに、近所の姉妹に両方、手出したら、それは色男だよ」 「陽ちゃんっ!?」 私があんまりな言い方をしたから、圭くんがこっちを見た。 「ははは。圭くん、焦ってる!」 「その言い方……。人聞き、悪い」 「ふふふ。そうだね~」 もう、圭くんが私と手をつないでいてくれるというだけで、姉の事も冗談にできる。 あまりに私は単純で、自分でもそれに笑えた。 玄関の前まで来ると、圭くんは手をそっと離した。 「明日、夜、いい頃、連絡して。迎えに来る」 「うん。迷惑じゃない?」 「じゃないよ」 そう言って笑った圭くんの瞳に、夕方の熱を思い出して、ドキッとした。 「じゃ、じゃあ、明日ね?」 「うん。明日」 余裕の返事に、一人焦って、ぶんぶん手を振って、家に入った。 泊まる約束をしてしまった。 蔵の二階には行ったことがないけど、半2階みたいな感じに見えるし、ゲストルームがあるとかではないと思う。 圭くんの寝室だけ?  あ、リビングがあるのか? でも、まぁ、誘われた。 さ、誘われたよぅ~。
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!