縁と月日

27/51
1685人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
「お父さん、何もしてないじゃん?私、掃除」 「ハイハイ。行ってきます」 「あっ。きのう、私、おじさんにお寿司ご馳走になったから。会ったらお礼……」 「ハイハイ。分かった」 しょうがないという風に財布片手にでかけて行く父を送り出し、早めの大掃除宜しく、バタバタと片付けをした。 今どきの子供もお絵描きとかするのかなとか思いながらも、色鉛筆を出して、コピー用紙なんかを用意する。 そうやって、片付けているうちに、母がたくさんの食品を買って帰ってきた。 「お父さんは?」 「お酒買いに行って貰ったけど、遅いなぁ」 母とお昼ごはんを食べていたら、父がようやく帰って来た。 「おかえり。遅かったね」 「ん。ちょっとな」 いい加減な返事で自分で冷蔵庫にビールを入れている。 圭くんのとこでずっとおしゃべりしていたんじゃあ、と思うと微妙に気になる。 「あ。陽。ヒロちゃんが昨日、助かったってさ」 「ああ。うん。全然。楽しかったし……」 はっきり両親に言うべきなのか。 父ははっきり言わないけれど、多分おじさんとおしゃべりしてきたからには、聞いたかも。 昨日の夜、お惣菜屋のおじさんに会って付き合ってるって言ったし。もうバレるのは時間の問題だろう。 今日、泊まりの予定だから、その前に自分から言う方がいいだろう。 別に今までの彼氏についても話くらいはしている。 「……あのさ、私、圭くんと、付き合いはじめたんだよね、最近。」 「えっ!?」 母がびっくりして口元を押さえた。 父は普通に平然としている。 「今日、圭くんとこに泊まるし」 続けて早口で言うと母は、私を見たまま、ぽっかーんと口を開けた。 「寝袋探すより、早いから」 言い訳のように付け足すと、父は、「ああ、そうか。悪いね」と軽く頷いた。 「うん」 「えっ、えー?お父さん、知ってたの?」 父と私の間で話が済んだ事に不満げな母は、父が何も言わなかったと文句を言っている。 「お姉ちゃん、来るよ、もうすぐ。道の駅についたって、メッセージ来た」 「あっ、ああ。昼御飯、食べてくるって?」 「うん。昼は食べてくるって。きっと、ゆっくりじゃない?」 姉の話に戻して、話を変える。 「そうよね、2時すぎよね、きっと。お茶菓子出すから、はじめ」 そわそわしている母は、姉達の到着に気を取られてくれた。 父がそんな母の様子に、私を見てこっそり笑った。
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!