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しばらくして旭ちゃんは、少し退屈してきたのか、部屋を見回した。
まだ夜まで夕食を共にする予定だし、姉達も両親大人同士で話があるだろう。
「旭ちゃん? 近くに公園あるけど、私と行く?」
「あ、良いの?」
「あ、うん。行っといで。お店とかも見ておいでよ」
「うん。行こうか?」と立ち上がると、岳さんが軽く頭を下げた。
「すみません、陽さん。旭、陽さんの言う事、ちゃんと聞いて、な?」
「分かってるよ、パパ」
いいお父さんじゃん。
「あーちゃん、おトイレ、あっち。行ってから行けば?」
「あ、うん」
姉も慣れた雰囲気で旭ちゃんに接していて、これから結婚するにしても、もう東京にはきっと彼らなりの生活があるのだなと思わされた。
秋晴れの夕方、二人で公園へ向かって、ブランコに乗った。
八歳の旭ちゃんは、もしかして、公園よりタブレットで遊ぶ年頃かもとも思ったけれど、家からちょっと連れ出したかった。
父親の再婚をどう思っているのか分からないけれど、どんなにいい子でも、急に連れて来られた父親の彼女の実家など、ずっといたら息が詰まるだろう。
「旭ちゃん、学校好き?」
「うん、普通に好き」
「そっか。担任は女の先生? 男の先生?」
「女の先生。新田先生っていう」
「新田先生か。私の小学生3年の先生は、おじいちゃんで渡辺先生だった」
ぶらぶらとブランコに乗りながら、そんなどうでもいい話をした。
「滑り台、やっていい?」
「良いよ」
たたた~と走って、素早く遊具に上がっていく旭ちゃんを目で追った。
インスタント姪っ子。
2回滑って、戻って来た。
「シーソーする?」
「良いよ」
確実に私が重いのだけど、仕方がない。
「私がぴょんぴょんするから、旭ちゃん、つかまっててよ?」
「うん!」
シーソーというより、ドタバタ。
ぴょこぴょこ。
数回上下に乗って、旭ちゃんが落ちたら怖いのでやめた。
またブランコに乗って、おしゃべりをする。
「お母さん、風邪、どう?」
「熱が出て、寝てたけど。薬飲んで、寝れば治るって。インフルエンザじゃないって言ってました」
「そっか。帰った頃には治ってるといいね」
「うん。多分、大丈夫」
「旭ちゃんは、寒くない?」
「うん。平気」
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