縁と月日

30/51
1702人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
おしゃべりしていたら、商店街の通りを川端酒店の車が通っていく。 「あ。」 圭君が運転してたけど、こっちに気が付かなかった。助手席は近所のおばあちゃんが乗っていた。タクシー代わりにされている。 「なに?」 「なんでもない。知ってる人が通っただけだよ。ジュースか温かいの、飲む?」 自動販売機を指差すと、頷いたので、一緒に公園の端の自動販売機まで行った。 「どれにする?」 「ミルクティー」と言って、自分のポケットから小さいポーチを出した。 「あ、いいよ。私が払うから。おごり」 「でも、お小遣いあるから……」 「いいの、いいの。ちょっと待ってね」と旭ちゃんを制して、自動販売機に向き直る。 この公園で、飲み物を買うのは久しぶりだ。 どれにしよ。 私もミルクティーにするか、久々にホットココアなんていう選択もある。 んー、ココアにしよ。 自分の飲み物に目星をつけて、まず旭ちゃんのミルクティーを買った。 「はい、旭ちゃんどうぞ」と振り返ると、そこに旭ちゃんはいなかった。 慌てて、ブランコ、滑り台、ゾウの上と公園を見渡すが、いるのは小さい子用の遊具にいる幼児とママさんと、その辺のハトのみ。 何処? 「あ、旭ちゃん?」 ママさんの手前、名前を叫ぶのは恥ずかしくって小声で呼んでも返事はない。 半径5メートルに旭ちゃんはいないのに、半径3メートル位の小声で呼んでも、返事があるわけない。 ヤバい。 何処へ行った? 公園の外へ行ったのだろうか? 圭君がこないだ言っていた変質者がいるかもと言うのが、急に思い出された。 家まで送るとよく言う圭君に大丈夫だと言ったら、もしかして変質者がいるかもだろ?と言われただけの話なのだが、急にあり得ると思えてきた。 そうすると、心臓がバクバクと鳴って、慌てて、公園内にいたママさんに近寄って女の子を見たか聞いた。 「あれ?さっきまで、一緒にいましたよね。ええっと……私も見てないですねぇ。お家に帰った訳じゃなくて?」 「いや、親戚の子なので、多分、一人では帰ってないと思うんですけど」 頭を下げて、四方八方にキョロキョロしながら公園の入口へあるいていくと、トンネルの遊具の中に旭ちゃんを見つけた。
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!