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おしゃべりしていたら、商店街の通りを川端酒店の車が通っていく。
「あ。」
圭君が運転してたけど、こっちに気が付かなかった。助手席は近所のおばあちゃんが乗っていた。タクシー代わりにされている。
「なに?」
「なんでもない。知ってる人が通っただけだよ。ジュースか温かいの、飲む?」
自動販売機を指差すと、頷いたので、一緒に公園の端の自動販売機まで行った。
「どれにする?」
「ミルクティー」と言って、自分のポケットから小さいポーチを出した。
「あ、いいよ。私が払うから。おごり」
「でも、お小遣いあるから……」
「いいの、いいの。ちょっと待ってね」と旭ちゃんを制して、自動販売機に向き直る。
この公園で、飲み物を買うのは久しぶりだ。
どれにしよ。
私もミルクティーにするか、久々にホットココアなんていう選択もある。
んー、ココアにしよ。
自分の飲み物に目星をつけて、まず旭ちゃんのミルクティーを買った。
「はい、旭ちゃんどうぞ」と振り返ると、そこに旭ちゃんはいなかった。
慌てて、ブランコ、滑り台、ゾウの上と公園を見渡すが、いるのは小さい子用の遊具にいる幼児とママさんと、その辺のハトのみ。
何処?
「あ、旭ちゃん?」
ママさんの手前、名前を叫ぶのは恥ずかしくって小声で呼んでも返事はない。
半径5メートルに旭ちゃんはいないのに、半径3メートル位の小声で呼んでも、返事があるわけない。
ヤバい。
何処へ行った?
公園の外へ行ったのだろうか?
圭君がこないだ言っていた変質者がいるかもと言うのが、急に思い出された。
家まで送るとよく言う圭君に大丈夫だと言ったら、もしかして変質者がいるかもだろ?と言われただけの話なのだが、急にあり得ると思えてきた。
そうすると、心臓がバクバクと鳴って、慌てて、公園内にいたママさんに近寄って女の子を見たか聞いた。
「あれ?さっきまで、一緒にいましたよね。ええっと……私も見てないですねぇ。お家に帰った訳じゃなくて?」
「いや、親戚の子なので、多分、一人では帰ってないと思うんですけど」
頭を下げて、四方八方にキョロキョロしながら公園の入口へあるいていくと、トンネルの遊具の中に旭ちゃんを見つけた。
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