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ふっと笑う横顔にこっちもニヤけそうになりながら、バイバイと手を振ってベンチに戻ると、「彼氏、かっこいいね」と言われて、思わず思い切り笑ってしまった。
ちょっと離れていて、そんなに見えなかっただろうに、お世辞かな?
まぁ、圭君はかっこいいけど、おませさん。
「ははは。旭ちゃんのパパもかっこいいじゃん」
「うん。パパはかっこいいけど、陽ちゃんの彼氏もいい感じだった」
「ハハハ。あの人ね、すぐそこの酒屋さんの人なの。圭君っていう。お姉ちゃんとも幼馴染なんだよ」
「紋ちゃんと?」
「うん。紋ちゃんと同い年で、幼稚園から一緒で仲良しだったの」
ピロピロっと携帯がなって、見れば姉だった。
「まだ公園?」
「うん」
「お母さんが、そろそろ寒くなるから帰っておいでって。夕飯の準備もあるし」
「あ、分かった。戻るね」
電話の内容は聞こえたようで、旭ちゃんが立ち上がった。
「行こっか」
二人で、おしゃべりしながら、家に帰って、猫に触ったと岳さんに言ったら、「痒くなるぞ」と言われて、旭ちゃんはどうせ泊まるのだからと、そのままお風呂行きになった。
母と夕飯の準備をして、ご馳走を作った。
というか、並べた。
商店街に住んでいいると、そこは気楽で、近所で売っているもので、結構豪華だ。
私が旭ちゃんと公園にいる間に、いわゆる結婚の挨拶は済んでいたようで「さぁさぁ、おめでたいし、ご馳走ねぇー」と、母が張り切って夕飯を出した。
岳さんは、父に勧められてお酒を飲んでいたけれど、さすがに大人で、落ち着いていて姉が好きになるのも分かるなという感じだった。
「あーちゃん、唐揚げ、食べる? コロッケもあるし、食べて」
「唐揚げ、食べます」
「旭ちゃん、ジュースはどれがいい? オレンジもぶどう味もあるよ」
旭ちゃんも、姉と母とみんなに質問攻めにされて、接待されている。
「公園、どうだった? 小さかったでしょ? 私達、子供の頃はよく遊んだけど」
姉がそう言うと、「ん。楽しかった」と旭ちゃんは、唐揚げを入れたばかりの口を開かないように手を添えてつつ、答えた。
ジュースでごっくんと流し込む。
「陽ちゃんの彼氏に会った、ね?」
ね?と振られて、ドキッとする。
「あー、うん。ちょっとだけね」
この年になっても自分の恋愛沙汰は家族に話すのが恥ずかしい上、姉にまだちゃんと話してなかったので、自分の中で妙な緊張が走って声が上ずりそうになる。
姉が驚いた様子でこっちを見た。
「彼氏?」
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