縁と月日

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「あー、あの、こないだから、圭君と付き合ってる」 私の微妙な動揺と、姉が知らない様子で、勘のいい旭ちゃんがしまった、余計な事を言ったと思ったのか、ちょっと困った顔をした。 そんな事を気にするなんて、少し大人びている。 気にしないようにと、旭ちゃんに「大丈夫」と小さく声をかけて姉に「わざわざ、電話で言う事でもないと思ってただけ。最近の事だし。あ、今日、私、圭君ちに泊まるしね。寝袋出すくらいなら、うちにって、後で迎えに来てくれる」と一気に言った。 全然、平気。 姉は半同棲してるんだし、私だって、彼氏の家に泊まったりもするさ。 旭ちゃんと岳さんの手前、サラっと、今どきのオープンな家族、大人の娘らしく言ってのけた。 全然、余裕。 ……。 いや、うそ。 ……かなりきつい。 恥ずかしい。 姉の反応が気になる。 正直、心臓が急にバクバクした。 「え。そうなの⁉」 「あ、そうなんだ。ごめんね、なんか」とさっと岳さんが謝る。 「全然、平気です。すぐそこだし。お姉ちゃん、私のベットで寝て」 姉が圭君がすぐそこの酒屋の息子だとか岳さんに説明すると、「ああ、紋の幼馴染の?」と岳さんが言った。 「うん。そう」 圭君や海斗のことも聞いているのだろうか。 二人の様子ではある程度の知っている感じだった。 姉が圭君と付き合ってたことも知ってるんだろうか。 「陽、言わないから、お母さん、知らなくて川瀬さんに朝、普通にこんにちは、しちゃったのよ、ホント」 「別にいいよ。家じゃなくて隣の圭君の所だし」 子供のお泊りじゃないんだから、母親同士でやめてほしい。 恥ず。 「陽、この間の大学の先生はどうなった訳?」 姉が岳さん達がいても気にせず、清水さんの事を聞いてくる。 「あれは、ええっと……、4月に北海道に行かれるそうだから……ご縁が無かったですねぇってことで……」 というか、圭君が諦めきれずに好きだったんだから、しょうがない。 一緒に来ないかと誘われた事は、言わないでおく。
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