0章

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口の中がひんやりとした感覚になってカップをドリンクホルダーに戻そうとシートベルトを少し緩めて上半身を前屈みにして腕を伸ばす。 カップが揺れるとその度に自分のスカートを濡らしていくので、既に白いスカートの一部分だけが濡れて歪な模様を描いていた。 同じところに数度水が垂れたせいで冷たさをほんのり感じていた素肌もしっとりと濡れていた。拭えるわけでもないのはわかっていながらもスカートの上から濡れた部分を擦ってスカートに水を染み込ませようとする。 結局、染み込ませた水分も車内に差し込む日差しのおかげですぐに乾き、歪に描かれた模様も綺麗さっぱり消えてくれた。 車が停止すると右側から大きく息を吐く音が聞こえて、視線だけ運転席の方へ向けると、優太は唇を尖らせて赤く光る信号をじっと見つめている。あまり横顔をしっかりみたことなかったなと思いながら思わず見入ってしまう。 間接視野で信号が青になったことに気付いて、優太は尖らせていた唇をそのままに少し座り直して少しずつアクセルを踏み込んでいく。 周りに車もいないからかいつもより踏み込みが強く、スピードに乗るのが早いなと助手席でも感じた時、私の視線に気付いたのか「どうしたの?」と落ち着いた声で問いかけられる。
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