0章

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そんなことを知ってか知らずか、優太はこちらを気にする素振りもなくまっすぐ前を見つめる。運転しているのだから当たり前だが、こんな表情もできるんだと何故か、少し誇らしい気分になった。 外から流れ込んでくる風が夏の生暖かさに加えて塩辛いベタつきを運んでくるのを感じ始めると、目の前には次第に海が広がっていく。 夏の昼間の海は高々と上がっている太陽の光を弾き、青ではなく白く光って見える。私はその光景が好きで海に行きたいとリクエストをした。 「珍しいよね、昼間の海が好きな女の子って」 「珍しいかな。意外といるんじゃない?」 「んー、でも昼間だと日に焼けるとかなんとか色々気にするじゃん」 優太から発せられた言葉は最もで、私だって日焼け止めは塗るしサングラスもする。できれば焼けたくはないと思っている。それでも優太が言うとおり、珍しいのかもしれない。 海が好き、ということではなく、その理由が。
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