「ウスイサチは今日も残業だ。はあっ」

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そこで私は職員の出張費用や経費の精算などを計算する、庶務課会計係を担当している。 人間、お金にはシビアだから、一円の間違いだって許されはしない。 日々、緊張しながらパソコンと向き合う毎日だ。 カタカタカタ・・・・。 うん。集中力が高まってきた。 この調子でいけば、定時で事務所を上がれそう。 カタカタカタ・・・カチャ。 ふう。やっと終わった。 「臼井さん。ちょっといい?」 やれやれと両手を高く伸ばしかけたその時、突如自分の名前を呼ばれ、恐る恐る振り向くと、庶務課の吉沢課長が眉毛を八の字にしながら、紙の束を私に手渡してきた。 「申し訳ないんだけど・・・この資料、今日中にまとめてもらえるかなあ?明日の午前中までに必要なんだよねえ。」 「・・・・・・はい。大丈夫です。」 「ほんと、すまないねえ。」 「いえ。」 すまないと思うなら、もっと早く依頼してくれればいいのにな。 そう言いたい言葉をグッと喉の奥で堪え、今受け取ったばかりの紙の束をじっとみつめたあと、はあっと小さくため息をつく。
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