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「ね。臼井さんは、観た?」
気を使ってくれているのか、吉木美沙は急に私に話題を振ってきた。
「あ・・・はい。」
「臼井さんはどの動物が可愛いと思った?」
「ええと・・・オラウータンが・・・」
「ええー?オラウータン?あのゴリラの出来損ないみたいな動物?どこがいいの?」
「えっと・・・あの・・・」
つぶらな瞳とオレンジ色の毛並みが可愛いの。
オラウータンって5歳くらいの子供と同じくらいの知能があって、すごく賢いの。
IPadを使えちゃうオラウータンもいるんです。
そして孤独を愛する動物なんです。
頭の中では色んな言葉が渦巻いているのに、上手く口に出せない。
言い淀んでる私を、吉木さんはしばらく不思議そうな顔で見た後、すぐにまた林田係長との会話に戻っていった。
林田係長にいたっては、私の存在など完全無視している。
ここで上手く会話が続けられれば「ウスイサチ」なんて陰で呼ばれることなどないのに。
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