「ウスイサチは今日も残業だ。はあっ」

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「ウスイサチは今日も残業だ。はあっ」

カタカタカタ・・・。 広いオフィスにパソコンキーを打ち鳴らす音が響く。 タイピングする指を止めずに、私は壁に掛けられた時計の針を仰ぎ見る。 そろそろ終業時間が迫ってきているからか、オフィス内では雑談をする職員達がちらほら現れる。 でも私は雑談の輪になんて入らない。 いや、入れないというのが正しいけど。 私の職場は、とある公的機関の都内にある事務所。 区民の方の大切な老後のためのお金や書類を取り扱う役所だ。 過去にずさんな事務処理体制が問題となり、世間の風当たりがものすごく強かった時期もあったけれど、今は新しい組織体制に変わり、幾分落ち着いている。 お客様はお年寄りが多く、私が勤めている事務所は住民が多い区なので、特に相談窓口は連日混み合っている。 お年寄り相手にかみ合わない会話を、必死に分かり易く説明しなければならない相談窓口担当者のストレスは半端ないことだろう。
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