彼 去りし日の夜に

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 私はむしゃくしゃして、夜中だったが、何かしていなければ落ち着かなかった。コンビニに具材を買いに行き、明日のランチ用にサンドイッチを作り始めた。料理とも呼べない料理だ。美味しくなあれの魔法よりも、怒りや恨みのスパイスが効いたやつ。  社会は敵だらけ。まったくその通りだ。同棲していた男にも裏切られた。信じていたのに何て仕打ちだ。まあいいさ。私にはスズがいるし、男なんてまた作ればいい。  時間も構わず母に電話した。あいつに振られた不満を聞いてほしくて。すると、慰めてくれるどころか母の雷が落ちた。私に可愛らしさが足りないからだとか、そのドライな性格を直しなさいだとか。くそ、また説教かよ、と私は舌打ちを隠さなかった。  心が(すさ)んでいて寝付けそうになかったが、スマホを(いじ)っているうちにぼんやりと意識が霞み始め、いつしか取引先の営業さんとお酒を飲む夢を見ていた。  今思い出しても幸せな夢だった。私は彼に気があるのか。またはその逆か。でもその夢を打ち砕くように、私は激烈な痛みに襲われた!
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