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『しょうがないと』 ツウ
夏の終わりの、満月の夜である。
またまた、やましんさんが、ふらふら散歩していたとき。
非常に厄介な存在が現われた。
狼おじさんである。
もっとも、狙いはやましんさんではなく、のらねこさんであった。
狼おじさんは、普段は、普通の、ま、サラリマンである。
しかし、彼の先祖は、狼族だったのだ。
まだ、人類がこのあたりには、現われてはいない、遥かなむかしだ。
狼おじさんの祖先は、非常に弱かったらしい。
それで、山猫族にいつも襲われ、いじめられていた。
いじめた側は、すぐに、みな、わすれる。
いじめられた側は、そうはゆかない。
狼おじさんは、満月の夜になると、眠ったあと、無意識に夜の闇に出没し、むかしの恨みをはらすべく、のらねこさんを、襲うのだ。
その夜は、たまたま、寝られないやましんの散歩に、出くわしたのだった。
『ふぎゃあ。』
狼おじさんに追いかけられた、のらねこさんが、やましんに助けを求めて飛び付いた。
『な、な、な、きみ、なに?』
『ふんぎゃ。ふう、ふう。んぎゃ。』
『わかんないや。ありゃー。あれはなにか?』
真っ黒なマントに身を包んだ、怪しき姿が現われた。
『ど、どら、どら……………』
狼おじさんは、真っ赤な口を開けて、やましんに襲い掛かった。
すると、まるで、見ていたかのように、大型バイクが現われたのだ。
『まちたまえ。給与生活者よ。』
『でたあ。』
やましんが叫んだ。
『ふんぎゃあ。』
突然の、しょうがナイトの出現に、狼おじさんは、いったんは、たじろいだが、すぐに体制を建て直した。
そして、またまた、その真っ赤なお口を開けて、攻撃に転じた。
『はははははははは。わたしは、しょうがナイト。弱いものをいじめてはだめよ。しょうがない。成敗いたす。はああああああ❗ 辛い、辛い🎵』
まさに、しょうがナイトには、おあつらいむきの相手である。
素早く、そのお口のなかに、大量の、からいからい、特製のショウガを詰め込んだのである。
『ふぎゃあ。から、から。あがあ〰️〰️〰️。』
狼おじさんは、火を吹きながら、そのあたりを転がった。
『さあ。逃げよう。』
やましんは、のらねこさんを抱いたまま、バイクに引っ張りあげられた。
『はははははははははは。辛い辛い❗』
😹
狼おじさんは、翌朝、お口のなかが、焼けるように痛いのには閉口したが、きちんと、出勤した。
狼おじさんは、近くの派出所のお巡りさんである。
『やましんさんが、なぜか、なんか、気になるなあ。』
狼おじさんの時の記憶は、ないと、みえる。
『やましんさんは、自殺要注意人物だからな。ちょっと、見回りついでに、寄ってみようか。』
のどかな朝であった。
やましんさんちの、小さな庭に行くと、やましんさんが、のらねこさんに、食べ物を差し出していた。
『こまったね。ぼくは、飼えないし。』
そこに、巡査さんがやって来た。
あわれ、巡査さんに、かの、のらねこさんが飛びかかり、さんざん、引っ掻いたのである。
『いやあ、なんか、恨みを持たれてるかな。はははははは。』
やましんさんも、笑うしかなかったのである。
🐈️
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