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追憶のアンネマリー
今じゃ観光地みたいに…最近じゃ、ツアーで来るのは禁止になったみてえだがな…そりゃたまったもんじゃねえよ、働いてる女達からしたら。
買う気もねえのに、カメラ片手にウロウロ…あっちは仕事してんだぜ?
ただな、運河沿いの店は、それなりにまともなんだよ。やばいのは路地裏にまとまってる。
緑の窓は男娼、青は子供…紫は特殊な嗜好…ってな。
俺が意味が分かる年頃になったのは、戦争が終わって暫くだ。
街中はナチの野郎どもがぶっ放した砲撃でがれきだらけだったが、運河は生き残った。
俺は海から上がった魚を船で町まで運んでたんだ。キベリング、ハーリング…タラとかニシンの料理だよ。あと、ムール貝に季節が来れば蠣。あんたの国も魚はよく食べるだろ?海運国家はどこも同じさ。
親は早くに死んで、4つ上の兄貴と二人で働いてたが、俺が13の時に酒場のあばずれと有り金もって消えちまった。俺が重荷だったのかもな…恨んでねえけど、場末で野垂れ死んでたら、スカッとするよな。
ある日、いつもみたいに朝早く、生臭い魚や貝をいっぱいに乗せて船を漕いでいた…両側には、昔から船乗りたちを楽しませていた飾り窓の館だらけ…意味が分かってからは、暫くはなんか真っすぐ見れなかったよ。
そこにいたんだ
二階の窓に
アンネマリーが
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