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「あっ! 俺、金城(かねしろ)に職員室に来いって言われてるんだった!」  突然大きな声で玉置がこう言った。  金城というのは、俺たちのクラスの担任教師のことである。 「え、何かあったの?」 「いいから、お前も行くぞ」 「え、俺も? ちょ、押すなよ」  玉置は中塚の背中を押して勢いよく教室を出ていった。  去り際に見せたにやついた表情は、何か勘違いしているに違いない。 「えっと……」  気づけば教室には俺と向原さんの二人しか残っていなかった。  向原さんに声をかけられる前はもうちょっと人がいた気がしたのだが、いつの間にみんな帰ったのか。 「ご、ごめんね、急に」 「いや、いいよ。それで、俺に用って?」  二人になって、向原さんと正面から向き合わざるを得なくなった。  向原さんは思いつめたような表情で俺をじっと見つめていた。 「近見くん、まだお昼ごはんは食べてないよね?」  いきなりなんだと思ったが、答えられない質問ではなかった。  放課後に突入したばかりなんだから、食べているはずがないのだが、向原さんにそんなふうに言えるわけがない。 「うん、まだ」  必要最低限の返事に留めた。  このあと玉置たちとラーメンを食べに行く予定だが、なんとなく言わないほうがいいと思った。 「そしたら、ちょっとだけ、時間をくれないかな?」  何をするのかはまったく予想は立たないのだが、断る気にはならなかった。  というか、向原さんに誘われて断る男子なんているのだろうか。
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